香港ミニチュア展 ~消失中的香港~ #4
                                 2014年11月28日更新                           


13.添記玩具 ― 昔のおもちゃ屋   Tim's Toy Shop    蔡璧龍 Ian Choi + 何国添 Tim Ho     1/12


 この作品は1970年代に、九龍城にある古い建物の階段下で営業していたおもちゃ屋を取り上げたもの。店内に置いた玩具類は、いずれも作者の長年にわたるコレクションであり、全部で200点に達する。
 当時から、香港は日本の漫画やテレビアニメの影響を強く受けていたため、おもちゃの中にはロボコンやゲッターロボ、マジンガーZなど、日本のキャラクターが多く見られる。




 これは驚きと言うしかないほど、緻密で濃厚な作品で、1/12のジオラマだと言うことを忘れそうになるくらい、リアルな商品群が並んでいます。

 日本の駄菓子屋兼、玩具店でも販売していた商品が並んでいて、香港らしい商品といえば、香港のTAXIと二階建バスくらいです。



 箱に入った商品だけではなく、透明な袋に入れてぶら下がっている商品群も、風船や飛行機なども良く似せて作られています。



 商品には日本語が氾濫しているので、香港の店先というより、日本の昭和の玩具店のミニチュアかと思うくらいです。



 箱に入った商品は、所有しているコレクションの箱をスキャンして、プリントしたものを箱形に組み立てればいいのですが、箱に入っていないものは、そのものを一つ一つ造形しなければならないので、恐ろしいほど手間がかかっています。
 


 ウルトラマンや怪獣のソフビ人形、マジンガーZなどのロボットのおもちゃなど、日本人が懐かしいと思うものががいっぱいあって、ノスタルジックな気分になります(^_^)



 店舗の側面などもきちんと作ってあって、素晴らしい作品に仕上げっています。





 14.林村許願樹 ― 林村の願掛けの木  Lam Tsuen Wishing Tree   
                
               熊貓玲玲 Lingsminiworld + 曽潤明 Sandy Tsang  1/24


 この願掛けの木は新界の大埔にあり、ご利益があると評判だ。
 10メートルに達するこの木を24分の1のスケールで再現するのは、きわめて難度の高い作業となった。この縮尺だと願掛け札は極小サイズになり、適切な工具もないため指先で何とか巻き上げるしかなかった。また、気根部分も本物感を出すために、白いタオルの繊維を茶色に染めた上で泥を付けるなどの工夫をした。




  この林村許願樹は今でも香港の人気スポットで願掛けをするには、願掛けの木にミカンを紐で結んだものに、願いことを書いた短冊を付けて、木に投げつけ、枝に引っかかると願い事がかなうそうです。 しかし大勢の人が毎日ミカンを引っかけようとするので、本物の樹は枝が折れてしまい、保護のため現在ではイミテーションの樹に、プラスチック製のみかんを投げつけるそうです(^_^;)



 願い事をかける板や、願い事を書いた巻物、そして線香なども細かく作られています。


 15.報紙檔 ― 新聞・雑紙の売店   Newspaper Stands   蔡璧龍 Ian Choi + 何国添 Tim Ho     1/12

 1960~70年代、新聞や雑誌、タバコを買いたいなら、飲茶の店に行けばよかった。店の前には必ずと言っていいほど、「報紙檔」があったからだ。店に入る前に新聞を買い、飲茶をしながら読むのが当時定番のパターンだった。
 現在、飲茶レストランの多くはショッピングモール内に移転し、「報紙檔」もコンビニに取って代わられている。毎朝、飲茶を楽しみながら新聞を読むという香港人の習慣も徐々に忘れられ次第にその姿を消しつつある。




 これまた店頭に並べられた雑誌類の数が膨大で驚くばかりです。 一冊ずつ実物の雑紙をスキャンして作ったものと思いますが、出来上がったものは1/12には見えずに、本物のブックスタンドに見えます。
 店頭に日本の模型誌「Hobby Japan」が置かれています。これは2009年から中文版として発売されているものです。香港には外国の雑誌が中文に訳されたものが多く発売されています。自分も香港に行ったときには、コンビニエンスストアや本屋で雑誌を買います。香港の雑誌は中文でも簡体字ではなく繁体字を使っているので、広東語でも北京語でも漢字の意味は日本語と同じものが多いので、大雑把な内容は判ります。



 ただ、現在の香港では新聞は収入を広告料で賄うフリーペーパーのタブロイド紙が勢力を拡大中で、朝の地下鉄駅前では、4,5人の新聞配布員が積極的に分厚いタブロイド紙を配っていて、全部もらうとかなりの重量になります(^_^;) それを地下鉄の車内やカフェで無料のタブロイド紙を読むのが香港のトレンドになっています。

 下は、自分が香港の新界の地下鉄駅前で見かけた光景で、朝から多くの人が集まって行列を作っているので、何事かと思ったら無料のタブロイド紙を貰うための行列でした。
 もちろん、駅の売店では有料の新聞も売っていて、より上質な情報を得たい人は駅の売店で有料の新聞を買いますが、香港の無料紙は内容もそれほど悪くなく、既存の新聞の脅威になっています。 



 16.神功劇 ― 仮設舞台で演じる伝統劇 Chinese Opera for the Immortals ・ 関美施 Macy Kwan   1/18

 
昔の香港では娯楽が多くなかったため、祝祭の節句になると街や村では仮設の部隊が組まれ、伝統的な芝居が上演された。この作品は、海夜行海の女神である「天后」の生誕祭における「神功劇」の舞台を描いたもの。二胡や月琴の演奏者も見える。さらに、この作品の特別な工夫としては、舞台全体が入れ替えられるように作ってあり、他の演目に変えることができる点が挙げられる。




17.香港髪廊 ― 昔懐かしい理髪店 Hong Kong Hair Salon ・ Tony Lai      1/12

 廃業した理髪店から創作のヒントを得た作品。
 本物感を追求するため、上部にミニモーターを入れたり10数個のマイクロLEDを取り付けたりといった工夫を重ねて、ようやく回転灯や看板の照明を表現することができた。




 この古き良き理髪店は、日本人や欧米の人が見ても懐かしさを感じる造りです。 マットの汚れや床に落ちた髪の毛まで再現しています。



 日本では、1000円カットの床屋の台頭や、一定の年齢以下の男性は床屋ではなく美容室に行くので、床屋こと古き良き理容室も減少傾向です。


18.香港涼茶 ― 漢方茶の専門店 Hong Kong Herbal Tea ・ Tony Lai      1/12

 「涼茶」は解毒と廃熱の効果があるとされる漢方茶のこと。
 涼茶を飲むことは、香港の代表的な生活文化の一つとなっている。
 店頭には人目を引く銅製の大型ポットが据えられ、街路に向けて「廿四味」、「銀菊茶」、「五花茶」などさまざまな種類の涼茶が並べられている。先を急ぐ人は店の前で立ったまま飲んでも良いし、時間があれば店内でテレビでも見ながらゆっくりと味わうこともできる。



 
理髪店と同じ作者の1/12の作品で、涼茶店の雰囲気をみごとに再現しています。
 香港は中国茶の文化と、イギリスの紅茶文化、そしてアメリカのコーヒー文化が中国への返還後にやってきましたが、やはり香港に来たならば伝統的な中国茶と、イングリッシュティーを楽しみたいものです。




 

   香港ミニチュア展#5に続く→