2011年6月18日(土) 戸崎反転地公園#8(岩肌の処理と三鷹天命反転住宅見学)
芸術家の荒川修作さんと詩人のマドリン・ギンズさんの作品をオマージュした作品を造っていると、もっと荒川先生達の作品に触れたいという欲求が湧いてきます。 幸い東京国立近代美術館の”路上”展(2011年5月17日~7月31日)でアルファベットの皮膚NO.3(1966-1967)という作品が展示されているのを公式ホームページで見て出掛けてきました。
展示されているのはこの一作品のみで(同博物館所蔵)、部屋を描き、線で家具を、アルファベットで人体のパーツの名称が書いてあったような記憶があります。
この作品は凡人には理解不能でした・・・
これでは、レイアウト制作の参考やモチベーションには繋がらないので(^_^;)、もう一つの巨大な先生たちの作品、三鷹天命反転住宅を見学してきました。
見学記は後ほどとして、とりあえずレイアウトの制作に入ります。
岩肌の処理
戸崎反転地公園の地面造りが一段落したところで、線路際でまだ未完成な部分があります。
このトンネルの入口の処理が未完です。
トンネルの上の公園部分が完成しないと着手出来なかったので、長らく未着工で最後にここを手掛けたのが制作記145で1年半以上も前のことです。
このトンネルの天井部分はあまり厚みがないので、強固な岩盤で出来ていることにします。
岩盤が地上に露出していると、トンネル部分が頑丈になるのと(トンネル工事は難航しますが・・・)、隣の県庁の高層庁舎が強固な岩盤の上に建っていれば、地震の多い日本でも安心です。
ニューヨークのマンハッタン島には摩天楼と呼ばれる多くの高層ビルが乱立していますが、マンハッタン島自体が地震がない上に強固な岩盤で出来ています。 セントラルパークにいくと岩盤が露出しているのを見ることが出来ます。
今年の東日本大震災では岩盤の上に直接載っているかいないかで、建物の損傷具合に大きな差が生じたので、岩盤の有無が気になります。
岩盤の表現はどうしようかと思いました。 雑誌やJAMでの実演のようにWoodLand Scenics=KATOのアースカラーキットを使って岩肌の表現をいつかやってみたいなとの願望がありますが、非常に面積が狭い部分なので簡単に本物の石を使うことにしました。
使うのは庭先の石ですが、岩肌の表現に本物の石に勝るものはなしかと・・・・
石の周辺を前回使用したメルファンドで覆って形を造ります。
最近、松本市に上信越高速道路を通った際、群馬県と長野県の境の岩山 妙義山近辺の夏の情景を参考にしました。
そして2日後、メルファンドが固まった後に、またターフをペースト状にしたものを塗り、その上に3種類ほどのパウダーをふりかけておきます。
これで夏草に覆われた岩盤になるかと・・・・
この岩盤から伸びる、高架線路にも緑化?を図ります。
高架線路の側壁にツタが絡まっているようにします。
ツタは大葉なのでモーリンのカントリーーグラス2をペースト状にしたのを側壁に塗っておきます。
最後に岩盤の上に、樹を一本立てておきます。
三鷹天命反転住宅
養老天命反転地の完成から10年後の2005年、荒川先生たちの設計した(共同設計 安井建築設計事務所・施工 竹中工務店)集合住宅 三鷹天命反転住宅が東京都三鷹市に建設されました。
複々線高架化工事が続いているJR中央線 武蔵境駅南口からバスで10分ほどです。
武蔵境駅のツタを絡めた大きなゲートはいいですね。
三鷹市大沢2丁目に建ち、目の前は6車線の東八道路。 国際基督教大学や深大寺、調布飛行場に囲まれた住宅地です。
14色のカラーを使用した特異な外観ですが、住宅前の木々もオープン当初は低かったのですが、あっという間に背が伸びて、通りから覆い隠しています。
外から眺めても楽しめる建物ですが、やはり最大の特色は室内にあるので不定期に開催される見学会に行ってきました。
最近は通路や階段なども部外者が入ると不法侵入になるので、このような見学会はありがたいです。
この建物は3階建で、独立した3棟が通路で繋がっている構造になており、2LDKと3LDKの9室があります。
うち、一階の3室は事務所として使用していて、4室が居住者がおり、残り2LDKと3LDKの1室ずつが体験滞在用の1週間単位のショートステイに供されています。
見学会はショートステイの予約が入っていない土曜日に行われるので日程はホームページで確認が必要です。
予約もホームページからで、1時間半で2,000円でした。(中学生以下は無料)
室内もそうでしたが、通路でも柱や階段、パイプなど様々な色で塗られています。
何か異様な色使いに最初は感じますが、しばらくするとこの色使いに馴染んできます(^^)
色は14色使用していますが、7色以上目に入ると人間は自然を感じるそうで、あえて7色以上が視界に入るように設計しているそうです。
また色は原色に見えますが、先生が原色を混色して作った色で、オリジナルだそうです。
このへんもレイアウトのストラクチャーを塗装するときには原色をそのまま使わずに、ほんの少しだけ他の色を混色したものを使うのを心がけたいです。
建物自体が丸や四角の構造体積み重ねたような形で、工場でPC(プレキャスト)構造体を製造し、現場で組み立てたそうです。
一番工夫が凝らされているのは室内です。
見学会は3階の3LDKの気配コーディネーティングの部屋に案内され、最初の20分くらい自由に体で工夫が凝らされた部屋を感じて下さいとの体験プログラムが行われます。
中央のリビングのどまんなかにキッチンを窪ませて配し、丸い部屋や四角い寝室がキッチンから見渡せるようになっています。
最大の特色は床でしょうか。 養老天命反転地と同じように玄関から入ったところから緩やかに傾斜して、自然とバランスをとって歩くようになります。
床の仕上げは砂利混じりのコンクリートで、コブが多数付けられています。
これが工事で左官屋さんが苦労したところで、大人と子どもの足の土踏まずの形に合わせて、コブが作られています。
室内を歩くと人間は自然と土踏まずでコブを踏みながら歩くので、健康にもいいとか。
床が傾き、でこぼこで、段差がある、反バリアフリー住宅に思えますが、説明によると視覚障がい者でも全体の位置が把握しやすく、好評でした。 そして高齢者も毎日この住宅で暮らすと、平衡感覚等が鍛えられて、健康になって長生きするとか(^_^;)
参加者は思い思いに住宅を体験できます。
住宅にはあえて作り付けの収納家具はなく、リビングは床が平坦でないので家具は置けず収納には苦労します。
荒川先生の提案は、天井に多数の頑丈なリングを取付けてあり、そこに吊り下げ用の金具を使って鞄や洋服などをぶら下げるそうです。
参加者の手荷物を実際に天井からぶら下げてみました。
球形の部屋はSYUDY ROOM 床がボウルのように湾曲していて、中に入ってもバランスをとるのが難しく寝転ぶしかない部屋です。
一階のオフィスではクッションやブランコを置いて休憩スペースにしてありました。
見学会のイベントとして球形の部屋に参加者全員が入って記念撮影をします。
今回は23名でしたが最大は40名まで入れたとか・
四角い和室には円形の畳が置かれ、周囲に砂利が敷かれています。
この砂利も素足で踏むと健康にいいそうで・・・
円形の畳は狭そうに見えますが十分に横になれる面積があります。
シャワーブースは透明ドアの付いた円筒形ですが、カーテンが取り付けてあります。
トイレはシャワーブースの裏側ですがドアが付いていない開放型です。気持ちがよさそう。
天候に問題なければ、屋上に昇らせてもらえます。
ただ、普段は居住者でも立ち入り禁止の場所で、垂直のハシゴを昇り、手摺りのない屋上なので、注意事項を守り自己責任で昇ります。
屋上に手摺りがあるのは通路部分のみ、各棟の屋上部分には手摺りがないので、見学会以外の立ち入りは禁止です。
自分はこういう所に昇るのが大好きなので、楽しい経験をさせて頂きました。
立ち入り禁止の場所にしては、屋上緑化もきちんとされています。
もうりっぱなガーデニングで、外から絶対に見えない部分でも、手を抜かずにきっちりとやっているところが粋です。
レイアウトでも屋上緑化が大好きな自分は、感動させて頂きました。
荒川先生の一番最初の構造図では5階建てになっていましたが、建築基準法による高さ制限は10mで3階建てになったそうです。
目の前が6車線の道路でも高さ制限は厳しいようで、帰ってから三鷹市役所のホームページで都市計画図をみると東八道路沿いは25mの準住居地域になってましたが、その裏の高さ10mの第一種低層住居専用地域に建物がひっかっかったのかもしれません。見渡せば周囲には高い建物もなく、いい住環境です。 (5階建ての天命反転住宅も見たかったですが・・・)
それにしても多彩な色使いは見事です。 荒川先生がこだわって色決めしたそうですが、その決めるスピードは速かったそうで天才の仕事です。
レイアウトにもこの彩色を手本にしたストラクチャーを作りたくなりました(^_^;)
見学会の最後は1階にある見学会を主催した㈱ABRFの事務所見学です。
間取りは住居部分と全く同じですが、実際にどのような使い方をしているか見てもらおうという意図です。
オフィス内に他の天命反転住宅とおぼしき模型と、天命反転タウンらしきパースがありました。
三鷹天命反転住宅の他に先生が実現されたのは、名古屋の志段味循環型モデル住宅(今は「シティーファミリー志段味」になった)とニューヨーク郊外のバイオスクリーブ・ハウスだけですが、世が世ならこのような街が世界のどこかに出来たと想像します(^_^)
養老天命反転地が完成した後(1995年)、、三鷹天命反転住宅が完成(2005年)するまで10年の年数がかかりました。住宅の構想は早くからあったそうですが、遅れた原因は養老天命反転地完成後に骨折者が発生したことがあるそうです。
その中の一人がマスコミ関係の方で、何でこんな危険なものを県営の施設で作ったんだという批判キャンペーンを繰り広げたので、反転住宅の着工が遅くなったそうです。
その後は養老天命反転地もヘルメットや靴の無料貸し出し、警備員の配置、立ち入り禁止区域の設定などの安全対策により(荒川先生はご不満でしたが)重傷者はなく、軽傷者も少なく、まもなく入園者200万人達成が間近になってきました。
養老天命反転地 お勧めです。ぜひ訪れて体験なさって下さい(^_^)
見学が終わった後は住宅の前にあるバス停から武蔵小金井駅に向かいました。
武蔵小金井駅南口も、中央線複線高架化工事に合わせて再開発が行われました。
UR都市機構が主体となった武蔵小金井駅南口第1地区再開発事業で造られたアクウェル武蔵小金井に行きましたが、ここに今やりかけの県庁舎周りの高架歩道のモデルにしたいものがありました。
自分が造りたいものが実在するのならば、参考のために取材して、実際に歩いてみました。
URの住居・専門店棟と小金井市のコミュニティプラザ・文化ホールと結ぶ高架歩道です。
考えていた物よりも、高架歩道を支える柱は細かった・・・・
ウッドデッキになっているので、足音が響くのもいい感じ(^_^)
3つの建物に囲まれたフェスティバルコートには3本の巨木が立ってました。 もともと、この場所に立っていた木を残したのでしょうか。
こういう多目的な広場もいいですね。 都市型レイアウトだとどうしても建物を並べたくなりますが、こういう広場も都市型レイアウトには必要かと。
左側の車が走りずらくしたコミュニティ道路も都市らしくでいいです。
武蔵小金井駅南口でレイアウト制作のための思わぬ収穫がありました(^_^)
反対側の北口は再開発を行っていないようで、高架化前の開かずの踏切があったころのままだったので懐かしく感じました。
中央線三鷹以西の各駅は複々線工事で変化が激しく、まだまだ工事の完了までは(2015年完成の予定でしたが何年になるか・・・)時間がかかりそうですが、変化が楽しみです。
最後に、油そばをたべようかと武蔵境の珍珍亭に東小金井駅から歩いて行きましたが、その途中ユニークな建物を見掛けました。
スタジオジブリは原発ぬきの電気で映画をつくりたいとの幕を屋上に掲げたビルがありました。
中央線の高架を通る乗客向けのアピールだと思いますが、新聞などにも取り上げられていました。
有名な会社なのに、ここに本社があるとは知りませんでした(^_^;)
原発ぬきの電気で映画をつくりますじゃなくて原発ぬきの電気で映画をつくりたいなので宣言と言うよりは、願望に近いものなので、クリエーターらしいなあ・・・・・
幕でアピールするだけあって、幕の下の1階から3階にかけてネットが張ってあって、その下にはゴーヤか何かの蔓草を植えたプランターが置いてあり、8月くらいにはビルの壁面を緑のカーテンで覆われるのでしょう。
窓も開けて冷房もなしでやっているようなので、アピールだけでなく、エコを実践されているのは立派だと思います。
線路側の南側の壁面は普通のビルのデザインですが、JRの変電所側の東側の壁面はいい感じの四角いデザインで、北側の屋根の明かり取りもいい感じです。
下から見えませんでしたが、屋上緑化もされているようです。
こちらの建物の方が本社だと思いますが、木々に囲まれています。
壁面はツタに覆われた緑豊かな建物です。
今回はレイアウト制作でツタに覆われた高架線路の側壁をやったので、今度はツタに覆われた建物のストラクチャーをいつかは造ろうかと思います。
今回はレイアウト制作よりも三鷹天命反転住宅の訪問記の方が長くなってしまいました(^_^;)
戸崎反転地公園の制作の方は、公園に配置する塗り替えた人形の数が揃うまで少しお休みにして、次は14階建てビルのキットを組み立てようかと思います(^_^)