西ドイツの駅前広場レイアウト  Bahnhofs-Vorplatz
   
西ドイツのレイアウトから学んだこと          
2012年8月31日更新

 自分が現在作成しているレイアウト 戸崎周辺を作るにあたって、年少期に大きな影響を受けたレイアウトが二つあります。
 
 一つは都市型レイアウトで以前紹介した本邦鉄道で、もう一つがドイツ(当時は西ドイツ 以下当時の表記を使用します)人のヘルマン・ザイレ氏の半島型のレイアウトです。
 



 ザイレ氏のレイアウトが紹介されたのは1976年3月号です。  



 しかし、この号の記事を読んだ記憶がありません(^_^;)   最近、古書でこの号を購入して、レイアウト紹介の記事を読みました。

  



 そして、同じ年の9月号に西ドイツのレイアウト 駅前広場 Bahnhofs-Vorplatz ヘルマン・ザイレ というタイトルでレイアウトの中の駅前広場に焦点を当てた記事が掲載されました。
 影響を受けたのはこちらの駅前広場の記事です。



 
 この1976年3月号と本邦鉄道のレイアウトが掲載されている1978年10月号の2つのレイアウト記事だけスクラップし、何度も何度も繰り返して読んだので、レイアウト戸崎駅周辺を作成するにあたっては、記事に書かれたコンセプトは継承しています(^_^)



 ちなみに同じ年の11月号の表紙にもザイレ氏のレイアウトの写真が使われています。 しかし、なぜかこの号にはザイレ氏のレイアウトの記事はまったく載っておらず、羊頭狗肉な表紙の号になっています・・・・  ザイレ氏の記事が掲載されているかと期待して買ってしましました(^_^;)
 






 この西独のレイアウトは西ドイツのMIBA出版社の協力で作成された記事です。
 (記事の翻訳者 高橋 晟子さんの翻訳もすばらい)

 記事の中で、レイアウトに置ける駅前広場論が述べられています。
 この記事の影響で、自分はレイアウトの中心に駅前広場を置き、そこから街造りを行ってきたのだと、最近再認識してきました。
 私がレイアウト制作を始めるかなり以前に、読んだヘルマン・ザイレ氏の言葉を紹介していきたいと思います(^_^)



 「鉄道模型趣味1976年3月号」P29からP38より引用
   青字部分は引用部です。 

>数年来、私はレイアウトのなかの駅前広場に特に注意の目を向けてきたが、そのほとんどがまま子扱いにされたり、実際とは違ったふうに表現されている。駅前広場は、ごたごた建物の間に埋もれてしまったり、明らかにスペース不足のため省略されたりしていることが多い。これはいずれも誤りである。なぜなら、どの駅にも程度の差こそあれ一定の広さをもった前庭が必ずある。

 >町なり都市なりが、そしてそれに付随した駅が大きくなればなるほど、駅前広場も大きくなる。したがって、模型においても駅の大きさからあらかじめ広場の大きさを見定めることができる。

 
街が大きくなると、駅前広場の大きさも大きくなってきます。 
 私がレイアウト戸崎駅周辺を作るにあたって、駅は特急列車が停車するような駅にしたい。 (最初は高架駅は新幹線の駅でしたが・・)
 今のJRの時代は中規模の街の駅でも特急列車は停車しますが、国鉄華やかなりし頃は特急列車が停車するのは、県庁所在地クラスの駅でした。 
 そこで、レイアウトの基本コンセプトは県庁所在地の駅と駅前広場を造ることにしました。


P29
 >都市の実在感を表すには二つの方法がある。
1.大なり小なり、できるだけたくさんの建物の集合群をつくること。
2.若干の、なるべく特徴のあるポイントによって都市の一区画を構成すること。(建物や道路や空地を、無理に小じんまりとまとめたりしないで)

 
1の、できるだけ建物を置くのは、多くの都市型レイアウトで見られるものです。かつてのTOMIXのカタログに載っていた都市型レイアウトも同じようなビルが集合体をつくって、都市を演出していました。
 私がレイアウトで使った手法は、ザイレ氏のいう2.の方法です。 ビルの数を減らしてでも、道路や広場などの空間を無理して設けました。
 大通りも6車線を確保しましたが、道路幅拡張のためにビルの敷地面積が削られ、そのために用意したビルのストラクチャーのキットの多くがお蔵入りになっています(^_^;) 




 P30
 >しかし、使えるスペースがあまりせまい場合には、建物の数を減らすとしても駅の広場を削ったりしてはならないというのが私の考えである。

 
駅前広場重視は、ザイレ氏からもっとも影響を受けた所です。 北口の駅前広場にはタクシー乗り場と自家用車用駐車場に、バスターミナルとペデストリアンデッキを設けるなど、かなり時間をかけました。
 

 
 それでも飽き足らずに、南口にも駅前広場を設けて駅前広場は2カ所になりました(^_^)



 >第二の方法は、バスターミナルやタクシー乗場、ゼブラゾーンがあり、いくつかの代表的な現代風の店舗と結びついた比較的大きな駅前広場のほうが、さまざまな種類の建物を並べたてるよりもはるかに強く大都市の存在を印象づける、という考えに基いている。

 レイアウトに建物を並べるのは簡単ですが、駅前広場を造る方がはるかに手間がかかります。 しかしレイアウト制作は手間を楽しむ物なので、手間をかけるのもこれ楽し(^_^)  都市型レイアウトなら駅前広場に凝るべし(^_^)

 >・・・レイアウトで大都市の駅を設置し、その周辺をスペース不足にもかかわらず現実的な大都市の印象をあたえるように表現するとなると、やはりむずかしい。 数十の建物をあれこれ並べてみたところで、とりわけ自由にできるスペースが小さい場合には、ほとんど効果がない。・・・・私のレイアウトはこのような状態にあってスペースも乏しかったので、・・・・・

 
個人の住宅でなかなかレイアウトのスペースを確保するのは、Nゲージといえども難しいことです(^_^;)
 私も駅前広場を造るにあたっては浜松駅くらいのバスターミナルをと意気込んで、図面をラフスケッチしてみました。 すると、現在のレイアウトベース全体を使わないと再現できないことが判明し、レイアウトがバスターミナルだけになってしまうことが危惧されたので、設計変更を行い現在の形になりました(^_^;)

>まず第二の方法で中都市の本物そっくりで現代風の駅前広場を構成してみた。
 どんな場合でも(スペース上の制約があるにしても)現代の大都市の駅の特質というものがあるはずだ。つまり、郵便局やレストラン、商店、市街電車と乗降場、バス乗場、タクシー乗場と自動車、植えこみのあるささやかなグリーンゾーン、花壇、ベンチ、そしてまた噴水や記念碑といったものが配置されている。


 
 レイアウト制作では本物そっくりに造るのもいいのですが、何よりもスペースが足りません。 私のレイアウトも駅前広場が4倍の面積だったら、理想の駅前広場がレイアウトに造れたのにと、悔やまれます(^_^;)
 
 


 それでも駅前広場のエッセンスとして、バス乗場タクシー乗場、郵便局、レストラン、そして商業施設にオフィスビル、ホテル、そして市街電車(LRT)の乗降場などを設けて、地方都市らしくしています。



>主な街路に面して、区切られた建物の一ブロックや飲食店、商店、子供たちのいる学校と校庭があり、そしてたくさんの通行人がいる。
 

 さすがに、県庁所在地の駅前には子供たちのいる学校はないと思うので(大学のサテライトキャンパスは除く)学校だけはレイアウトに造っていませんが、通行人はお説に従いたくさん配置しています(^_^)




 ザイレ氏のレイアウトのすばらしいところは、レイアウトの情景の中にライブスチームを楽しむ人がいたり・・・・



 屋根裏部屋のアトリエでヌードモデルとパレットを片手に筆を動かす画家の情景(これはPreiser社がトレードショーで展示したジオラマをHO化したもの)などがあることです。




 ザイレ氏のレイアウトでは駅前広場の反対側は、河口の埠頭の情景になっており、偶然にも戸崎駅周辺も駅前広場の反対側は港湾の情景で、船を浮かべるところもザイレ氏のレイアウトと共通しています(^_^;)



 

 日本では都市の顔の1つとして、駅前広場を重視していると思います。 特に鉄道を使った訪問客がその都市にいだく最初の印象は駅前広場になると思います。 典型的な例が東京駅丸の内口が首都の顔として戦災前の駅舎に復元工事と合わせて駅前広場の整備が行われており、都市の顔として鉄道事業者だけでなく、地方自治体も公共工事の一環として駅前を整備しています。

 Googleの画像検索で駅前広場を検索すると多種多彩な駅前広場の画像が出てきます。 同じくドイツ語で駅前広場を意味するBahnhof Vorplatzで検索すると同じように多くの魅力的な駅前広場が出てきます。
 同じく鉄道大国のアメリカはどうかと英語のstation squarestation plazaで検索するとやや面白みに欠けます。いいなと思うと日本の駅前広場だったという画像もあります(^_^;) これはアメリカの鉄道の主力が旅客でなく貨物であることもあるかと思います。
 でも、アメリカのLRTの停車場のデザインに、モダンでいいなと思える物があるのもアメリカらしいです(^_^)
 各国の駅前広場を見ましたが、都市間輸送ではまだまだ鉄道が主力で、都市の顔となっている日本の駅前広場が好きです。

 

 私にとって、鉄道模型趣味誌の本邦鉄道とヘルマン・ザイレ氏のレイアウトを見たときに、レイアウト制作の種が蒔かれました。

 それから、レイアウト制作が始まるまでには、かなりの年月がかかりましたが、種を蒔かれるのは幸いです。
 この2つのレイアウトに出会って幸いでした(^_^)
 
 引き続き、駅前レイアウトの戸崎駅周辺を整備していきたいと思います(^_^)