本邦鉄道への思い・・・・
                                     
2008年8月19日更新

 先日、とある掲示板のレスで私のレイアウトが或るレイアウトと似ていると書かれて、思い出したことがありました。
 私のレイアウトの原点となったレイアウトがありました。それは角田文寿さんの作られた、「本邦鉄道〜大都会とその周辺〜6線区間を行き交う色とりどりの列車」「鉄道模型趣味」の365号 1978年10月号に掲載されています。
(同社の別冊の「レイアウトコレクション1」にも再録されています)
 作者は角田文寿氏で、記事も写真も氏によるものです。
 レイアウトのサイズは3,000o×1,850oの三分割・立掛式のレイアウトです。



 記事が掲載されたのが1978年(昭和53年)で、記事によれば制作期間は2年半とあるので、作り始めたのが1975年(昭和50年)頃だと思います。

 掲示板に書かれたのを期に「レイアウトコレクション1」の記事を読み直し、かつ古本でTMSの365号も購入してみました。
 
 その当時、大都市を走らせるようなNゲージの車輌といえば103系電車くらいで、他に写真を見ると、153系急行電車や、EF58に引かれた旧客などを走らせていますが、やはり、色とりどりの103系が活躍するレイアウトになっています。

  3複線のある都市型レイアウトで、崖手線(モチーフにしたのは山手線)、京浜南北線(同、京浜東北線)、南海道本線(同、東海道線)で、大都会(同、東京駅周辺)と、高台(団地)及び海と山の情景を走ります。



 記事にはレイアウトの製作過程が詳しく載っており、分割・立掛式レイアウトゆえ、自分のレイアウトに比べたら土台など、かなりしっかり頑丈に作ってあります。

 作者自身が記事の中で、このレイアウトの耐用年数を10年としているので、もうこの世に「本邦鉄道」は存在していない可能性があります。
 やはり分割してある組立レイアウトだと耐用年数が短くなるのか、それとも作者自身が10年も経つと新しいレイアウトが欲しくなるからでしょうか・・・・
 余談ですが、会社や個人が事業の目的で、展示やレンタルレイアウトに供した場合、減価償却でレイアウトを経費化するための法定耐用年数は何年か見てみました。
 「(減価償却の)耐用年数等に関する(財務)省令」によれば、「器具および備品」の「娯楽またはスポーツ器具および興業または演劇用具」で私なら「その他のもの・主として金属製以外ものも」の5年を適用します。
 しかし平成20年の税制改正により法定耐用年数の見直しが行われ、「娯楽業用設備」の「その他の設備」の「その他のもの」で8年が適用されるかと思います・・・・


 自分でも忘れていましたが、本邦(ほんぽう)鉄道は無意識に私のレイアウトに大きな影響を与えています。
 レイアウトの名称を「戸崎駅周辺」と「高枝駅周辺」としたのも、角田さんの「大都会とその周辺」という名称から、知らず知らずのうちに影響を受けたと思っています。

 
 ストラクチャーも今に比べたら国内メーカーからの製品は少なく、都市型レイアウトで使用しているのはグリーン・マックスの中型駅ビルを改造したものが、いくつか置かれていますが、メインはボール紙を材料とした自作のものです。
 この自作建物の製作法も図入りで詳細に載っており、参考になります。


 ドイツ製のストラクチャーキットを組んだものも、街のあちらこちらに置かれています。(まだこの頃は、現在多くのレイアウトで見られるTOMIXの総合ビル、中型ビルは発売されていません)
 私のレイアウトのストラクチャーのほとんどが欧米製のストラクチャーキットを組んだものを使用しているのは、知らず知らずのうちに「本邦鉄道」の影響を受けているのかと思います。
 同じく駅前大通りを6車線の道路にしたのも影響を受けているのでしょう。

 


 レイアウトの製作過程も参考になりますが、レイアウトの<プラン>でレイアウトのコンセプトを記述してあります。
 都市型レイアウトを造る上で参考になると思いますので、少し長いですが引用させていただきます。




 「鉄道模型趣味1978年10月号」P35より引用
  青字部分は引用部 緑字部分は私のコメントと自分のレイアウトとの差異です。


    〈プラン〉
 プランを設計するにあたり、次のような条件を決めてみました。
1.手放しで連続走行出来るよう、全線をエンドレスの周回線とする。
2.4線、6線と線路が平行する都会的高架線の再現。
3.対象を国鉄型とし、私鉄或いは外国車も走らせたりするおとぎダイヤ(?)は避ける。
4.駅のホームは20m級車輌8連以上の有効長を確保。
5.ヤードの類は設けず、必要とあれば駅に留置する等してスペース確保に努めること。
6.道路は幅員を充分とった実感的なものとし、名ばかりの道路とならぬよう留意する。

1.については割り切って設計し、終端駅や行き止まり線を一切設けませんでした。従って車輌の方向転換や入替等いわゆる小太刀の妙は味わえませんがやむを得ないところです。それよりも、私は当鉄道のオーナーであり、ドライバーではないということ。時にはコントロールボードから離れて行き交う列車に目を近付けたり、反対側から眺めたり、とにかくリラックスして走行を楽しみたいというのが本音です。


 自分のレイアウトはロングランさせたくて二重のエンドレスになっています。アップダウンはありますが走らせ甲斐があります。手放しで列車を運転させて、レイアウトの四方八方から眺めて楽しんでいます。

 運転のもう一つの楽しみは、駅に列車を停止させることです。駅に進入すると次第に減速し、ホームの停止目標できっちりと停車させる・・・ 当たり前のことですが、ゲーム「電車でGO!」や「Train Simulator」でも、これが難しい・・・・ けっこうオーバーランしていました。
 レイアウトの運転でも、マスコンとブレーキハンドルを備えたツーハンドル型のコントローラーを使用すると、難しさも増し、楽しさも倍増です。


 
2.については前作に対する反省、つまり狭いスペースとわかっていながら、ロングランさせたくて線路を長々と引き回し、二重、三重の高低差と相まって線路はローラーコースター、トンネルは吉見の百穴スタイルから脱却すべく発想の転換をはかってみたわけです。そこでたくさんの線路を集中させてもおかしくない大都市型にスポットを当て、これが今回のメインテーマとなりました。

 列車をゆったりと走らせるならば、シンプルな線路配置。 レイアウトにおける線路の占有面積を少なくしたければ、車両基地、機関区などの設備を設けないプランも自分のレイアウトと共通しています。ただし二重のエンドレスになっていますが(^_^;)

3.については、4線・6線と線路が並び、通勤電車や長距離列車、貨物列車がひっきりなしに行き交うのが本鉄道のテーマであってみれば、私鉄や蒸機はお呼びでなく、まして外国型車輌等は論外で、これらが入り混って走ればぶちこわしになるのは明らかです。

 これはたいへん耳が痛い警告で、私のレイアウトでは私鉄は言うに及ばず、米、独、瑞西、仏、墺、台湾の車輌が走ることがあります。おとぎダイヤ(?)状態ですね(^_^;)

4.この程度のスペースで20m級8連以上のホームとなると、やはり全体の均衡に影響を及ぼすようですが、長編成の幹線を採用する以上致し方のないところです。車輌がはみ出すホームよりはましと考えます。

 当初は私のレイアウトは戸崎駅のホームが最短が6両、最長が11両ですが、 2,400 ox 1,150o、このくらいの大きさのレイアウトでも6両編成程度の車輌が一番似合います。
 自分がホームの長さは、Nゲージの車輛セットの基本がおおむね6両から8両であり、それに合わせて手軽に編成が運転できるようにしました。
 ゆえに自分はレイアウトで走らせる車輌を中心に購入するので、購入するのはほとんど基本セットのみで、最近流行の「フル編制病」には罹っていません(^^;)
 
 自分の過去の習作レイアウト(定尺ベニヤサイズ)のホームが5両編成までしか対応していなかったので、物足りない気分が強く、今回のレイアウトは特急列車も無理なく走らせることが出来ます。
 国鉄時代の特急列車が12輌編成がざらだったのが、現在では6輌編成以下の特急列車が珍しくなくなり、実物の方が短編制化して、レイアウト向きになりました(^_^)


5.ヤードを設けるとなるとそのスペースは馬鹿になりません。ヤードのためにシーナリィ/ストラクチャーのスペースが小さくなり、不自然になるのは避けたいところです。
 
 この考え方を自分は全面的に支持します。
 多くのレイアウトを拝見すると、狭いスペースの中で機関区車両基地が置かれ、レイアウトのほとんどの部分を線路関係が占めてしまうレイアウトが多くなっています。シーナリー派としては線路の部分を減らしてでもストラクチャーを置きたくなります。自分の場合、ストラクチャーの為に電留線を廃しましたが、駅のホームに6列車を置くことが出来ますので、電留線の必要は感じていません。

 また自分のレイアウトでは複線間の渡り線は設けていません。特に多くのレイアウトプランで使われているダブルクロッシングは使用しない方針です。前作の習作レイアウトでTOMIXのダブルクロッシングでは通過出来ない車輌や、脱線車輌に悩まされたので使用は避けたいものがあります。
 同じ理由でカーブポイントも、省スペースという利点はありますが、カーブポイントでの脱線多発で、これも使用していません(-_-;)

 
6.については、前作においてあまった箇所を道路にしたので幅が狭く、名ばかりの道路となってしまったので、今回は始めから道路スペースをプランに入れて検討しました。結果はレイアウトにゆとりと活気が出てきたようです。

  このレイアウトに出会う前は、レイアウトは線路が主役で、道路は本当に対向車がすれ違えるのかと思えるほど、狭い道路造られているレイアウトが多く見られました。「本邦鉄道」に出会い、都市型レイアウトは実際の街のように、片側2車線、3車線の道路にしなければ駄目だと教えられました。
 自分も道路に関しては、都市ならば都市らしい道路を、という方針は堅持しています。

 


 本邦鉄道では「都心部のA駅」と称していますが、東京駅の八重洲口の情景をモデルにしています。(実際の八重洲口は30年前と様変わりしつつあり,2011年完成予定で、新らしい駅前広場の整備が行われています)


 「本邦鐵道」は駅を出るとお茶の水から飯田橋にかけての神田川に沿った景色をモデルにした情景になります。その後、国電は住宅地の高台を周り、南海道線は山岳部と海岸部を回ります。
 このレイアウトは都市部と郊外の住宅地、山地海岸が同居しています。多くのレイアウトでも見られる構成で、変化に富んだ情景を一つのレイアウトに盛り込んでいます。
 自分のレイアウトは都市の風景に限定しているのが違っています。また、分割式のレイアウトは走らせるまで、組立や調整に時間がかかりますが、一体式の固定式レイアウトは、運転を始めるまでの時間が短いのが利点です。(場所はとりますが・・・・)

 




 「本邦鉄道」の記事は30年以上前のレイアウトですが読み返してみても、都市の風景にわくわくし、レイアウトに対する考え(コンセプト)も、なるほどと唸らせます。まさに都市型レイアウトのバイブル的存在です。
 ぜひ「鉄道模型趣味」の365号 1978年10月号を入手されて、ご一読されることをお勧めいたします。
 私も先人のレイアウトを手本として、「本邦鉄道」の後に続いていきたいと思います(^_^)