2015富士総合火力演習
                                    2015年 9月 8日更新                                                                                 


 毎年8月に東富士演習場で行われる富士総合火力演習に行ってきました。

 


 本番は8月23日(日)ですが、その前の8月18日(火)に行われた「学校予行1」という予行の日に行ってきました。
 
 

 本番と予行と、なにが違うかというと、防衛大臣が来るか来ないかということもあるけど、発射する実弾の数(特にミサイル)も予行の方が少なくなっています。
 なによりも大きく違うのは、観客の数で本番ならば一般公募もあるので、観客が3万人に対し、予行は自衛官や自衛隊関係者、募集業務で地方協力事務所が配られたもの 演習場周辺自治体に配られた招待券など限られているので、観客の数は少なく数千人なのでゆったりと見られます。

 今回も自衛隊協力団体のバスツアーだったので、演習場近くの駐車場まで来られるので移動の苦労はありませんでした。

 ただ去年まで道路を挟んで会場の裏手にあったシャトルバス乗り場が一段下がった東側の駐車場に移ったので、去年まであった仮設の陸橋は今年は設けられませんでした。(去年のシャトルバス発着場は、VIP・報道関係者用駐車場に今年はなっていました)

 



 席はAからEまであるスタンド席&前面シート席のうち、スタンド席の中では一番条件の悪いEスタンド席でしたが、朝6時に駐車場に着いたので(その代わり、出発したのはかなり早い時間でしたが(^_^;) )、6時半の入場時間には楽々間に合い、Eスタンドの中では条件のいい場所に座れました。朝の段階では前面シート席は前から1列くらいしか埋まらないガラガラ。Eシート席も7時半まで埋まりませんでした。

 
 
 朝のうちは天候は悪く、小雨が降っていました。そんな中、朝6時過ぎから戦車部隊の点検射(試射、予行射撃)が行われました。
 点検射を終えた74式戦車2両がいつまでも、会場から退出しません。
 Eスタンドからかなり離れたAスタンドの前なので、状況が判りませんでしたが、双眼鏡で見ると戦車の左側の履帯(キャタピラ)が外れていました。 

 

 報道関係者が陣取るAスタンドの前でしたので、注目を浴びました(^_^;)
今年は、23日(日)にも10式戦車も履帯外れがあり、その前の日の22日(土)は、10式戦車が発射した120mm砲弾の離脱装弾筒の破片が2名の観客に当たり、軽傷を負わせるなど、今年は事故のあった総合火力演習になりました。 しばらくしてから、履帯の外れた74式を戦車回収車が牽引していきました。

 

 6時半から演習が始まる10時までの3時間半、席で待つことになりますが、点検射や演習場整備が途切れなく行われているので、退屈はしません(^_^)

 


 白く濃い霧が会場を覆います。富士山麓の東富士演習場は標高が高く、山の天候なので霧というよりは雲です。
 この雲に覆われると視界が10m以下に落ちます。このままでは目標への射撃どころか、車両の走行にも困難をきたすほどの雲が会場を覆いました。

 

 しかし、天佑により演習の開始時刻には天候も視界も回復し、問題なく演習が行われる天候に変わりました。

 



 前段演習~陸上自衛隊の主要装備品の紹介~が始まります。

 最初は遠距離火力の展示です。三種類の火砲の登場で、最初は155㎜りゅう弾砲  射程約30㎞

 

 203㎜自走りゅう弾砲 アメリカのM110A2自走りゅう弾砲をライセンス生産したもので、小型の車体に203㎜という巨砲載せたのをみると、砲を運搬するために特化したもので、搭乗する隊員も定員5名のところ8名載っているのも壮観な風景です。
 限られたスペースの車体なので砲弾は2発しか搭載できず、射撃するときには87式砲側弾薬車がペアで行動し、射撃のために必要な人員13名のうち8名は、砲側弾薬車に乗車します。

 

 最後に登場するのは、99式自走155㎜榴弾砲で、車体の長さよりも長い砲身を持つ自走砲で、長槍(ランス)を構えた騎士のようなイメージです。
 最大射程が40㎞と長く、装填も全自動式で発射間隔も10秒以内と高速になっています。

 

 最初は99式自走りゅう弾砲の射撃。2両並べて、1両は砲塔を90°右に旋回しての射撃です。

 

 203㎜自走りゅう弾砲。さすが陸上自衛隊では最大の火砲なので、発射音、発射煙とも大きいのですが、射程約30㎞の砲が目標まで3,4㎞の射撃なので装薬は最低の量なので、アメリカ ワシントン州に行って最大射程で発射するときには、ものすごい砲煙と発射音でしょう。

 

 FH-70 155㎜りゅう弾砲は、装填などは自走砲と違って人力なので、発射作業は見応えがあります。

 

 観客から見える広場で発射するのは1門だけですが、観客から見えない左手奥には中隊規模の特科部隊が陣を構えており、会場からの砲撃+4、5門の射撃と弾着があります。

 

 目標の頭上で砲弾を炸裂させる曳下射撃。頭上で炸裂するので伏せていても破片が降ってくるというやっかいなもの。
 毎回、富士総合火力演習で実弾射撃を見ていて、見学するぶんには砲撃の着弾は爆発と音で勇壮なのですが、もし自分が着弾地点にいたら恐ろしい目に遭います。
 砲撃をする方と、される方では大違いで、戦争映画でも多くの砲撃シーンが出てきますが、自分が一番気になるシーンは「遠すぎた橋」です。
 最初の地上戦でイギリス軍 第30軍団の機甲部隊が前線を突破するときに準備射撃として25ポンド砲の砲列がドイツ軍の陣地を砲撃します。イギリス軍から見る視点と、砲撃を受けるドイツ軍からの視点の両方が描かれています。 着弾地点が少しずつドイツ軍の陣地に迫る様子は、黒いカーテンが迫ってくるような迫力があります。しだいに着弾点が近づき砲弾がドイツ軍陣地に到達すると、黒煙で真っ暗になり阿鼻叫喚のシーンになりました。このシーンは砲撃を受ける側の恐怖のシーンとして今でも印象に強く残っています。そんな激しい砲撃を受けても、ドイツ軍側は全滅することなく、イギリス軍に反撃を行い、損害を与えた後に戦闘爆撃機の襲撃により敗退しました。

 

 最後にすべての遠距離火砲を使って、「富士山」を描きます。 

 

 砲弾の到達時間が異なる火砲を使い、発射時間をずらして同時に炸裂させるという高度な射撃技術を要する射撃です。
 
 

 中距離火力の展示は迫撃砲から。120㎜迫撃砲RTはフランスの迫撃砲を国内でライセンス生産したもので、120㎜は重迫撃砲で発射音、着弾時の炸裂も大きく迫撃砲の王者の風格があります。 

 

 中距離火力として誘導弾(ミサイル)の射撃がありますが、予行の段階では会場スクリーンにビデオ映像での射撃シーンのみで実弾の発射は省略という場合があります。
 その中で、古い87式対戦車誘導弾の発射のみでした。誘導弾は価格が高いのでやむを得ません。

 近距離火力の誘導弾は、軽装高機動車から発射出来る01式軽対戦車誘導弾の発射はありました。この誘導弾は後方へのブラストが少ないので、会場前の広場からの発射です。

 

 普通科の隊員7名を載せ、戦闘支援できる89式装甲戦闘車は35㎜機関砲の射撃です。第二次大戦初期の戦車砲に匹敵する35㎜機関砲の射撃は迫力があります。砲塔両脇には79式対舟艇対戦車誘導弾が2基、かなりの強武装です。ただ配備数が68両しかなく、特定の部隊にしか配備されていません(^_^;)

 

 ヘリ火力は陸上自衛隊の対戦車ヘリコプター2種。
 最初はAH-1Sによる対戦車ミサイルTOWの発射。AH-1Sが導入された頃、TOWミサイルの値段が1千万円以上と聞いて驚きましたが、今ではそれ以上の価格のミサイルが数多くあるので、そんなに高いと思わなくなりました(^_^;)

 

 AH-64Dロングボウアパッチヘリコプター。実戦で証明された本格的な対戦車ヘリコプターですが、自衛隊では調達価格の高騰から13機の調達に終わり、1個対戦車ヘリコプター隊の定数にも満たない機数なので、佐賀県の目達原駐屯地の第3対戦車ヘリコプター隊の第2飛行隊などに配備され、AH-1SやOH-1と共に隊を更正しています。 13機という機数は少なく感じますが、700機以上配備しているアメリカが異常なだけで、20機程度を保有しているイスラエルがアパッチを活用しているのを見ると、13機程度でもそこそこ活躍しそう(日本の場合、活躍されても困りますが(^_^;) )です。
 
 強化されたエンジンで重い機体にもかかわらず、AH-1Sよりも派手な飛行で登場します。

 

 さすがに高価で、まだ十分な消費期限を持つヘルファイヤミサイルは発射せずに、射撃展示は機体下部に付けた30㎜チェーンガンを発射します。
 大口径の機関砲なので発射すると多量の発射煙と、ガンから大きな薬莢がすごい勢いで落下してきます。

 何年前の総合火力演習かは忘れましたが、アパッチがヘルファイヤ―ミサイルを発射したときがあって、その時はAH-1Sコブラの音速以下のTOWミサイルを見た後、音速のヘルファイヤミサイルの飛翔スピードの違いに驚いた経験があります。ミサイルの早さだけでなくヘルファイヤミサイルは、有線誘導するワイヤーもなく命中するまで照準し続けることもないので、発射するヘリコプターの生存率が高くなっています。

 

 対戦車ヘリコプターが槍だとすると、地上部隊の近接防御を担う楯となる87式自走高射機関砲です。
 スタンド席の距離から見ると1/144のミニチュアが動き回っているように見えて、楽しめます(^_^)
 細かな動きを見たければ双眼鏡を使えばいいので、総合火力演習にはいい双眼鏡は自分にとって必携です。
 

 2両合わせて4門のエリコン社製35㎜機関砲が発射されると発射煙で見えなくなります。20㎜バルカン砲だったらブーンという発射音になりますが、大口径の35㎜機関砲なので、ダダダという断続音で発射されます。

 

 退役が進みつつある74式戦車ですが、現代の戦車の複合装甲を用いた角張ったシルエットとは異なり、避弾経始の丸々としたシルエットが愛おしくなります(^_^)
 
 

 油圧サスペンションを使用して車体の角度を変えられる特色を生かして、斜面から車体を水平にしての射撃です。

 

 続いて、90式戦車が走行しながら目標を射撃できることを展示するために、行進しながらの射撃です。
 観客の近くで射撃する120㎜砲の衝撃と音は凄まじいもので、普通科隊員だったら戦闘行動中の戦車には近よりたくないでしょう。それに敵の戦車も航空機、ヘリコプター、そして歩兵も戦車を最優先に狙ってくるので、戦車乗りは因果な商売です。
 

 観客席の近くで発砲するので衝撃波と、燃え残りの硝煙滓が降り注いできます。スタンド席にまで降り注ぐので、前面シート席はかなりの衝撃でしょう。
 あまりにも観客席の近くで発砲するので、本番の23日には10式戦車の120㎜砲弾の離脱装弾筒の破片が、前面シート席2列目の観客2名に当たり軽傷を負わすという今までなかった事故も起きたので、来年からは観客からもう少し離れたところからの射撃になるかもしれません。

 

 90式戦車も何発も射撃を行いますが、ここでコンタクトレンズを入れた私の目に異変が起きました(>_<) 120㎜砲の硝煙滓が目に入り両目とも痛みで目が開けられませんでした。経験上、総合火力演習でヘリコプターが離着陸するときには、ダウンウォッシュで細かな砂埃が襲ってくるので、それに備えてゴーグルのようなサングラスを用意していましたが、戦車の射撃で硝煙滓に襲われることまでは想定していませんでした(>_<)  ハードコンタクトレンズなので外して水道で洗いたいところですが、演習中なのでそのようなことは出来ないので、必死に涙で洗い流しました(^_^;)

 

 90式戦車の後は10式戦車による射撃になりますが、目に入った硝煙滓のお陰でよく見ることが出来ませんでした(^_^;)