香港ミニチュア展 ~消失中的香港~ #3
                                 2014年11月21日更新                           


8.長洲太平清醮搶包山 - 長洲島の饅頭祭り Cheung Chau Bun Festival(Bun Scrambling)  湯潤琴 Piano Tong      1/18

 香港の離島である長洲は、島で釈迦の誕生日に毎年行われる祭りで広く知られている。祭りのクライマックスは、数千個もの饅頭が取り付けられた高さ10数メートルに及ぶ饅頭タワーでの饅頭の争奪戦だ。自分の家族の幸せを祈願する意味があり、より高い場所にある饅頭を取れば、さらなる好運が訪れると言われている。
 この作品はミニチュアながら高さ1メートル近くあり、饅頭タワーにつけられた約5,000個の「平安包」は作者が苦心して手づくりしたものである。






  9.海鮮檔 ― 生け簀のある海鮮料理屋  Seafood Stall       黄曼萍  Bertha Wong          1/12
 
 この作品は香港の新界東部、海鮮料理で有名な西貢の情景を題材とし、船着き場近くの海鮮料理屋を描写している。大小の水槽にはいろいろな種類の魚介類が入っている。目を引く生け簀の様子を演出するため、さまざまな魚、階、エビ・カニ類のミニチュアを粘土で作り、臨場感を醸し出している。




 店頭のおびただしい粘土で作った魚のミニチュアが圧巻です。



 見ているだけで、香港の市場内の魚屋の臭いがよみがえるほどリアルな作りです。水槽で泳いでいる魚も本当に海鮮料理屋の店頭のようです。
 1/150のジオラマを作っている自分にとって、1/12のスケールはここまで再現できるのが羨ましいです(^_^)



 テーブルは調理された料理が並びます。客席には1/12の人形が座っていますが、ドールハウスの世界では人形は人形らしくするのが作法なのかもしれませんが、店頭の魚介類のリアルさと大きなギャップを感じます。




   10.大牌檔 ― 道端の屋台  ”Dai Pai Tongs" Open-air Street-stalls      黄曼萍  Bertha Wong     1/12

 屋台は香港の食文化のさいたるものの一つと言われる。第二次大戦後の困難な社会環境下で、政府は就業の機会を生み出すために多くの屋台許可証を発行し、これらの屋台が屋外で軽食を供することを許可した。しかし、公衆衛生上の問題から政府は免許の発行を減らし、こうした屋台の数も減少することとなった。
 この作品は、簡単な調理器具を使い、移動可能で安価なメニューを特徴とし、香港市民に安くておいしいファーストフードを提供した屋台を再現した。




 3台の屋台と、調理器具、そして食材がこれでもかというくらい並んでいます。



 日本でも屋台は衛生上の問題で、新たな営業許可を出さない自治体が多くなっており、移動式のキッチンはアメリカと同じくフードトラックやフードカーに変わっていっています。
 今の香港でも、このような屋台形式の店舗を見ることが出来ませんでした。 屋台のような店舗は多く見かけましたが。



 このジオラマは地面がなく、作者のポリシーか、それとも、これから地面を制作するのか判りませんが、地面があった方がジオラマも引き立つと思います。




   11.龍鳳大礼堂×満漢全席 ― 龍鳳大ホール×満漢全席  Dragon and Phoenix Hall × Manchu Han Imperial Feast

                                    Tony Lai + 陳慧姫 Maggie Chan               1/12

 この情景は1977年、香港の国賓大酒楼で日本のテレビ局の撮影のために行われた2日にわたる4回の宴席のうち最後の宴の模様。
 残された4枚の写真と文字資料をもとに、想像力を駆使して再現した。
 メニューは、大きなアワビを用いた「崑崙網鮑」、イノシシのもも肉を使った満州族の有名料理、「焼哈兒吧」、ハタを蒸した「巨海皇鮮」にロブスターと地鶏の「龍鳳交輝」等々。精密な装飾を施した食器類も、すべて手づくりの作品である。




  12.花籠 ― 後付のベランダ  The Caged Home in Walled City     蔡璧龍 Ian Choi + 何国添 Tim Ho + 趡斯静 Lowell Chiu   1/22.5

 1970~80年代の香港では、居住空間の狭さから多くのアパートで窓の外側に後付けのベランダのようなものを取り付けることがよくあった。この「花籠」と呼ばれる違法建築は、住人に花を植えたり、新聞を読んだりするスペースを作り出し、泥棒よけともなっていた。
 しかし、こうした古いアパートの大部分はすでに解体され、花籠は香港人の記憶の中に残るのみである。




 これは3人の作家が共作した力作です。作品がガラスカバーの付いた額縁に納められているので、ショーケースの外側から写真を撮ると映り込みが激しく、この作品だけは撮影に苦労しました。
 この作品のスケールは1/22.5で、ドールハウスのスタンダードなスケール1/12とは異なり、人形もリアルな人形になっています。
 なぜ、中途半端な1/22.5スケールかと思いましたが、おそらく我々、鉄道模型の2番ゲージ(Gゲージ)のスケールが1/22.5なので、その人形などが使えるので、このスケールを選んだのでしょうか。



 洗濯物や植木鉢でゴチャゴチャした感じが、香港らしさを表しています。
 植木鉢も、このスケールになると精巧な造りになっています。




   香港ミニチュア展#3に続く