香港ミニチュア展 ~消失中的香港~ #2
                                 2014年11月 6日更新                           


4.郷村厨房 - 田舎の台所 Kitchin in Countryside        李来有Loi-yau Li     1/12

 創作のヒントは隣家の裏庭から得た。ここは農村生活の特色でいっぱいである。自分で作った簡単だが開放的な大きな台所。
 年越しの時期になると、女性たちはここで中国正月餅や点心菓子類を蒸したり、正月料理を煮炊きしたりする。かまどがあって、場所も広いので、どれもうずたかく積み上げられるほどたくさん作る。
 作品の素材は木材と紙類、アルミ片、乾燥した木の枝、粘土のほか、若干の既製品と作者のコレクションである。


5.圍村盆菜宴 - 客家氏族村の大皿料理宴会 Walled-village "Big Bowl Feast"       李来有Loi-yau Li     1/12

 「盆菜」というのは香港新界の「圍村」の数百年の歴史をもつ伝統的な料理で、盛り合わせ式の一種の大皿料理のことである。
 祝い事があると「盆菜宴」が催される。料理は素朴なものから立派なものまであり、10種類程度の品目を盛り合わせる。一番下には大根を敷き、湯葉、魚肉つみれ、豚の皮、豚肉、中国うなぎ、イカ、エビ、鶏肉などを層になるように木やアルミの盆に盛りつけていく。
 熱々の盆菜が運び込まれると皆で飲み食い、にぎやかなおしゃべりに花が咲く。



 
コンロに載せられた大皿の料理が本当においしそうに作られているのが見事です。


 6.覇王別姫 - 覇王項羽、王妃との別れの舞台 Farewell My Concubine       西樹 Tod Lin    1/12

 この作品のインスピレーションは、張国栄(レスリー・チャン)主演の同名の映画「覇王別姫」から得た。作者は明朝式の家具の様式と工芸を研究し、全ての家具や楽器は可能な限り本物の材質で制作されている。観客席前列のテーブルと腰掛けは清朝末期から民国時代にかけての茶館の楡(にれ)材の家具を模したものを採用した。
 床には、当時スナックとして食べた瓜の種の殻を再現するため、本物の瓜の種を買ってきて、その殻を細かく削って床に散らしてある。



 
スゴいのは、劇場のジオラマを1/12で制作したこと。ただし、無人の劇場なので、舞台上の小道具に見るべきものはありますが、椅子が散乱した劇場の風景は大味になってしまい、あまりじっくり見る人は少なかったです・・・



  7.天台屋 - 屋上部屋 Rooftop Apartment       Tony Lai    1/12

 「天台屋」は屋上部屋のことで、香港独特の住居の1つ。地下の高い香港では住居の確保が難しく、屋上やルーフバルコニーを部屋に改造して、賃貸しているものが少なくない。
 この作品は2階建て、5部屋の設計で、リビングに置かれた材料や道具は70年代、香港で軽工業が盛んであった頃、人々が家で内職として造花作りをしていたことを描写している。リアルな質感をだすために作者は外壁や廊下に材料探しや完成後も経年変化を表現する作業などに努力を傾けた。



 
ビルの屋上に建てられた2階建ての住宅、日本では違法建築になりますが、香港でも同じでしょうか。同じく地価の高い北京では最近、目に余るビルの屋上の違法建築に対して規制が厳しくなってきたという報道を見ました。
 私が香港を訪れたとき、今でもビルの屋上や、テラスに平屋や2階建ての住宅を見ることが出来ましたが、それは「天台屋」の名残でしょうか。もっとも、現代の「天台屋」はきれいな建物になっていました。



 二階の子ども部屋も生活感あふれる作りになっています。




 
本棚の教科書や、勉強机の上のノートも細かく作られています。



 
1階のリビングには、内職中の造花が置かれています。1970年代の香港は軽工業が盛んで、Made in Hong Kongと書かれた製品をよく見ました。 
 
造花は第二次大戦後は日本の輸出産品でしたが、「ホンコンフラワー」を始めとする香港製の造花が日本に大量に入って来ました。そして今は香港製の造花はなくなって、造花と言えば中国製になってきました。 それが今年になって、円安や中国の人件費上昇、そして品質の問題から、造花の製造が日本の内職に一部戻りつつあります。




 
ジオラマの裏側には、天台屋の外側が作られています。屋根や外壁のトタン板の錆びたウェザリングが参考になります。



 
本当に、細かく作られた作品です(^_^)





   香港ミニチュア展#3に続く